豊かな森を破壊しようとするアクロイヤーの一団。
だが、彼らの動きは、既にアサシンフォースの知るところであった。
用意周到な罠に誘い込まれた彼らは、一人、また一人と戦闘力を奪われていく。
量産型のフォレストハイドは、皆、ニンジャレディ
シナの仕掛けたトラップや不可思議な忍術の前に倒され、残るは首魁のアクロバイオムただ一人となった。
木漏れ日の注ぐ穏やかな森の中に満ちる殺気。
冷たい眼で相手を見つめるシナと、屈辱と怒りに震えるアクロバイオムが対峙する。
流れるような動作で、シナの手から手裏剣が放たれた。
しかし、それはバイオムを大きく外れて飛び去っていく。
「どこを狙っている、小娘がっ!」
嘲るようにバイオムが叫んだ。
しかし、シナは相手の雑言にも怯まず、続けざまにもう一つの手裏剣をバイオムの正面へ放った。
バイオムは、右腕のアクロファングで振り払うようにして、易々と手裏剣を弾き返した。
「これしきの攻撃が、俺に効くとで…」
全てを言い終わらぬうちに、バイオムは崩れるように前へ倒れ込んだ。
その背中に深々と突き刺さる一つの手裏剣。
そう、これこそシナが最初に放った手裏剣であった。
「狼虎相撃(※)。前後同時に襲いかかる私の手裏剣を防ぐことはできないわ。小娘なんて侮ったあなたの負けよ。」
「周囲へのアクロウイルスの拡散も防がないといけないわね。大至急、医療班のスペースレスキューにこの死体を回収させましょう。」
今までの死闘が嘘のような穏やかな顔で、動かなくなったモノを見つめながら、シナは一人呟いた。
シナがその場を後にしようとしたその時、バイオムの頭部が身体から離れ、稲妻のような素早さで飛び跳ねた。
不意を突かれたシナは、為す術もなくバイオムにその身を絡め取られてしまった。
「やはり小娘だな。俺を殺すなら、細胞の一片まで焼き尽くすぐらいのことをしなくては駄目なんだよっ。」
アクロパイソンが、大きく咆吼した。
「身体を捨ててアクロパイソンへと変化するこの技は、さしずめ忍法・空蝉の術とでも言ったところか? 忍術使いよ、哀れだな。ハハハハハ…。」
笑いながら、シナを嬲るようにアクロパイソンが締め上げていく。
全身の骨が砕けそうになるくらいの締め付けがシナを襲っていたが、シナは手にしたクナイを離そうとはしなかった。
「俺の毒で、なぶり殺しにしてやる。まずは、その喉笛から喰らってやるぜ。」
アクロパイソンが、その毒牙をシナに打ち込もうとした時、一瞬、締め付けが弛んだことをシナは見逃さなかった。
だが、アクロパイソンの牙は、もう目の前だ。
絶体絶命のニンジャレディ シナ、彼女の運命は!?
生き残るのは、どっちだ!?
※狼虎相撃
先に投げる手裏剣をブーメランのように飛ばし相手の背面へ、後から投げる手裏剣を相手の正面へ投げる。前後に挟み込むようにして同時に手裏剣を命中させる技。
( 『忍者用語の基礎知識』現代忍術研究会 編/八陣書房
刊 )
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