中国河北省M村。
7月初旬、朝。
清清しい空気が、あたりを包んでいた。
誰もが爽やかな目覚めを感じるであろう、そんな一日の始まりの時間。
しかし、アクロウィルスの拡散によって立ち入り禁止区域に指定されたこの村には、人の姿は見えない。
ただ一人、ミクロマンとの戦いに備えて亜苦露拳の修行をするアクロディータを除いては。
ディータは、廃寺の池に浮かぶ蓮華の上で瞑想していた。
全ての戦闘プログラム・亜苦露拳を会得したが、まだその結果には満足せず、ただひたすらに自問自答を繰り返していた。
ミクロ生命体として、この世に生まれた意味とは何か?
何故、自分は亜苦露拳を究めんとするのか?
強さとは何か?
力とは何か?
何度も何度も、己に語りかけるディータ。
彼女は、自分の精神と身体と世界の境界も分からなくなるほどに集中していた。
そして、時は訪れた。
自分の中に、解答を見出した瞬間、それは光となって、ディータの中から満ち溢れてきた。
「………開眼。」
黄金の輝きに包まれたディータは、宇宙と同一なり、彼女の目前には森羅万象が広がっていた。
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