−北アイルランドの民話より
北の村の外れに、大きな森がありました。村人の糧となる木々や動物・植物などが豊かな森でした。
しかし、村人は、絶対にその森に入ろうとしません。なぜなら、そこは魔の潜む森だったからです。
あるとき、村に小さな旅人が訪れました。困った村人から話を聞いた旅人は、私が魔物を退治しましょうと申し出ました。
旅人は、果敢にも魔物のいる森へと入って行きました。
どれぐらい進んだときでしょうか、森の奥から女の助けを呼ぶ声がします。
旅人が、声の聞こえるほうに行くと、そこには美しい女性がいました。
女は、「道に迷ってしまいました。旅のお方、どうか私をお助けください。」と言います。
旅人は、こんなところに女が一人で居るのはおかしいと思い、手にした銀の剣に女の顔を映してみました。
するとどうでしょう、剣に映る女の顔は、醜い魔女の顔でした。そう、この女こそが、村人を苦しめる魔物だったのです。
魔女の操る毒蛇の毒を浴びながらも、旅人は銀の剣で魔女の首を跳ね、ついに魔物を退治したのでした。
しかし、魔物の毒により、旅人は村に帰り着いたところで息絶えてしまいました。
村人達は、この勇敢な小さな旅人に敬意を表し、見晴らしの良い丘に手厚く葬ったといいます。
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