−ミクロエド行政機関 敷島藩上屋敷
広大な屋敷の中を歩く二人の女性。
一人は、管理官のセツナ。その後ろを歩くのは、女中のおハル。
セツナは私室に戻ると、窓辺にふわりと腰を下ろし、燃えるような紅い大きな扇子を広げた。
「おハル、すまないけれど、今日は、この後、少し残っておくれ。ヒドウ様、直々のお言い付けだからね。」
セツナは、有無を言わさぬ言い方で、一方的におハルに告げる。
「はい…。しかし、何のご用でしょうか?」
急な言い付けだったので、おハルが不思議に思って訪ねると、
「さぁて、ねぇ。きちんと残業のお手当も出るし、ヒドウ様に認められれば、エドを出る許可も頂けるかもしれないわよ。」
セツナは、勿体ぶったような言い方で微笑んでいる。
「分かりました。一生懸命、勤めさせていただきます!」
弔牡丹に隠れたセツナの口元が、あざ笑うかのように醜く歪んでいたことをおハルは知る由もなかった。
ミクロエドを覆う闇は、暗く深く街を覆っている....
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