時は暮れ六ツ。夕闇が迫る神社の境内。
まもなく夜の闇が世界を覆い尽くそうとしている時間にミクロエドの管理官・非道敷島守は、供も連れずに一人そこに佇んでいた。葉桜の翠が眩しい季節になったが、陽が落ちると風はまだ冷たい。
非道は、ふと振り返り、後ろの茂みに向かって言った。
「そこの鼠。いつまで隠れておる?」
すると、茂みの中から音一つ立てずに一つの影が現れた。彼こそ、闇のアサシンフォース
− 十六夜のショウマである。
「貴様、あの時の旅の太夫か?」
静かに非道は、問いかける。
「俺を誘い込んだつもりか、非道敷島守?
いや、アクロヒドウ。
闇のアサシンフォースが、貴様の命貰い受ける。」
隠れていたことを見破られたことに動揺する様子もなく、低く落ち着いた声でショウマは答えた。
それを聞いた非道は、目を細め小さく笑った。まるで、冗談を聞き流すかのように。
「皇帝陛下より賜りし、この体、うぬごときに傷つけることなど出来ぬわ。
仮に某が、お主に討ち取られたとしよう。
だが、その後はどうするのだ?
このミクロエド、そして世界中のコミューンに今やどれだけのアクロイヤーがいると思っている?
皇帝陛下の忠実なる下僕は、我等だけではないぞ。
それに、お主は、元々ミクロマンだったモノたちまで斬れるのか?
既に種は蒔かれ、うぬらに修正できぬほど世界は蝕まれておることに気付かんでか?
我々は、闇よりもなお暗き深淵の闇。
光も闇も全て飲み込んでくれようぞ。」
非道の言葉が終わったとき、彼の顔はもう一つの顔に変わっていた。
非道敷島守からアクロヒドウへ。本当の姿へと。
鋭利な刃物のような殺気が、二人の間に満ちて行く。
恐ろしいほどに冷たく、息をするのも苦しくなるような濃密な気。
この緊張の糸を断つようにショウマが叫んだ。
「闇を以て闇を斬る。
アクロヒドウ、地獄へ堕ちろっ!」
闇の中に生まれた閃光。
二つの闇が交わり、一陣の風が世界を駆け抜けた。
新しい時代の到来である。
|