−敷島藩上屋敷
明け六つ
まだ、朝のすがすがしい冷たさの残る時間。
その日、女中のミクロレディ ナツ は、庭の掃除をしていた。
ふと、人の気配を感じ後ろを見ると、そこには館の主・非道敷島守の姿が。
「御館様、何かご用でしょうか?」
ナツは、ひれ伏しながら主に聞いた。
「そう畏まらずとも良い。
今日はな、おナツ、そちに良い話を持ってきたのだ。」
突然のことに戸惑いの表情を見せるナツ。
「なにも捕って喰おうというのではないぞ。
そなたは良い観相を持っておる。
しからば、偉大なる皇帝陛下と共に生きる栄誉を与えて進ぜようと思うてな。
さぁ、儂の手を取るのじゃ。」
非道が、柔和な笑みを浮かべながら、ナツへと手を差し出した。
だが、次の瞬間、ナツの目の前にいたのは、非道敷島守その人ではなかった。
それは、禍々しい大蜘蛛を腕に絡ませた異形の存在。
「い、い、いやぁーーーーーーーーっ!」
眼前の異常な状況に混乱するナツ。
凍り付いたように動くことも出来ず、ただ震えているだけだった。
「まぁ良いわ。
ムザン、おナツを地下牢に放り込んでおけ。後で転生させる。」
ヒドウがそう言うと二人の他に誰もいなかったはずの庭に、ムザンの巨大な姿が現れた。
ムザンは、震えるナツを肩に担ぎ、悠々と屋敷の奥へと消えていった。
ミクロレディ ナツ。
後に彼女が地下牢で殺害されるところをアサシンフォースのユメが目撃する。
数日後、身元が分からないほどに焼かれ、炭化した死体がミクロエドの用水路に浮かんだ...
ミクロエドを覆う闇は、暗く深く街を覆っている....
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